BenQ ZOWIE Vital レビュー。高級外付けサウンドカードの実力は?
今回はBenQ ZOWIEの世界初プロゲーマー向けオーディオデバイスである「BenQ ZOWIE Vital」のレビューだ。発売から時間が経ってしまったが、企業より製品提供があったため、レビューする運びとなった。
BenQ ZOWIEとは?
ゲーミングモニター業界では最大手とも言えるBenQが、ゲーミングマウス分野で定評のあったZOWIE GEARを買収し、現在のBenQ ZOWIEとなる。コンセプトは真にプロゲーマーが求めるもの。徹底したドライバレス主義やシンプルな外観が特徴となっている。オーディオデバイス分野ではまだこの製品しかないため、僕にとっては未知数だが、その実力はどうなのか。じっくりとレビューしていくとしよう。
長所
〇外付けサウンドカードにありがちな遅延がほぼない。かなりの低遅延。
〇タッチパネルで直感的な操作ができて簡単。説明書がいらない。
〇サラウンド効果が素晴らしい。定位が非常にはっきりしている。
〇低音、高音を自由に素早く上げ下げできる。
〇軽くて持ち運びできるのでオフライン大会に向いている。ポーチも付属。
〇専用ソフトがいらないので、すぐ自分の設定を呼び出せる。ドライバレス。
〇音楽用にも使える。中音と高音はフラット。低音を設定で上げれば高音質で聞ける。
〇イヤホンとコンデンサマイクとの相性がいい。カラオケや配信で使うコンデンサマイクの場合、キーボード音や周りの雑音を拾ってしまいがちだが、これを間に挟むことで音漏れが解消した。
短所
×価格が高い。逆に言えばこれしかないのだが、さすがプロゲーマー向けといったところか。お値段もプロ並みである。
製品仕様(公称)
・接続:USB(電源)
・入出力端子:ヘッドフォン、マイク用の3.5mmミニプラグ。スピーカー用の3.5mmプラグ。
・最大サンプル周波数:48kHz/16bit
・ネイティブビットレート:44.1, 48, 96 kHz
・ヘッドフォンインピーダンス:16~250Ω
・ヘッドフォン周波数:20-20kHz
・ヘッドフォン信号対雑音比:<-100dB@ 440Hz, 0db
・ヘッドフォン全高調波歪:<0.002%@ 440Hz,-4dB
・出力電力:32Ω=250mW、250Ω=30mW
・スピーカー:1,000-10,000Ω
・スピーカー周波数:20-20kHz
・スピーカー信号対雑音比:<-110dB@440Hz , 0dB
・スピーカー全高調波歪:<0.0017%@440Hz , 0dB
・電力:USBバスパワー(300mA/5V)
・消費電力:1.5W
音質と使用感
最初に驚いたのは音が非常に高解像度、ということだ。低音から高音まで多くの音が耳に響いてくる。サラウンド効果が素晴らしい。だから定位感ももちろんあって、FPSで足音が聞きやすい。低音と高音の設定をフラットにして音質を確かめると、低音がやや軽く感じた。デフォルトでは低音はあまり響かないようにしているようだ。これはFPSを重視するゲーミングヘッドセットやサウンドカードで多く見られる傾向だから、何ら不思議はないだろう。むしろ低音を抑えることで、足音などの重要な音が聞きやすくなるというわけだ。設定で低音を重厚にすることもできるから、音楽を聴く時やソロプレイなどでは手元でいじっても上げてもいいかもしれない。バスを3段階あげるとちょうどフラットくらい(つないでいない状態)になるイメージだ。
中音と高音はフラットな傾向で、ヘッドセットやイヤホンの特徴をそのまま出すような綺麗な音質となっている。特に高音は綺麗なまとまりがあり、音割れもしにくいし、洗練されていて聞きやすい。一般的にゲーム向けのヘッドセットやサウンドカードというのは高音と低音どちらも強調するドンシャリタイプと、全体的に高音を強調するシャリシャリタイプのふたつに分かれている。この製品はそれらを自分好みに簡単に設定できるから非常に使い勝手がいいと言えるだろう。シャリシャリタイプだとどうしても音楽などには不向きになってしまうが、このサウンドカードだとそれもない。この点は地味だがとてもいい点だと言える。逆に言えば劇的に音が変わるわけではないから、それを期待すると肩透かしを食らってしまう。あくまでゲームに必要な音を自分好みにカスタマイズでき、それをオフライン大会でも使えるよという立ち位置だ。
マイク
マイクはややこもった音になったが、比較的クリアに伝わるので必要十分だろう。なにより僕が嬉しかったのはコンデンサマイク(カラオケで使うような本格的なマイク)がこれまで拾っていたキーボード音を拾わなくなったこと。僕は最近、イヤホンが楽なのでコンデンサマイクと組み合わせて使っているのだが、音漏れがそこそこしていたので気になっていた。使っているのはド定番のSONY製「PCV80U ECM-PCV80U」だ。それがこれを挟むことで全然音漏れしなくなったので、手放せなくなってしまったというわけだ。どうも内部で声以外の不必要な音を削っているようで、それでややこもった音になるんだと思われる。
操作
・TRE:高音を上げる。最高6段階、最低6段階の計12段階。
・BAS:低音を上げる。最高6段階、最低6段階の計12段階。
・VOL:音量調整。計14段階。
・マイク:音量調整。計14段階。
・ヘッドフォン:音量調整。計14段階。
・スピーカー:音量調整。計14段階。
・マイクミュートボタン
・ロック
操作感はまずまずだ。なにより説明書がなくても直感で操作できるのが素晴らしい。「こういうのでいいんだよ」というのがぴったりのUIだ。液晶パネルが本格的すぎて、フィルムを張らないと指紋がついてしまうのは評価が分かれるところかもしれない。これ用のグレアフィルムが1000円くらいで売っていればいいのだが、それもないようなので、ちょっと残念。
個人的にはこのシンプルな外観が気に入っている。前から思っていたが、ZOWIEのデザイン担当者は本当に優秀だ。どこかAppleを思わせるシンプル性とおしゃれ感だ。最近はDIVINAという女性ゲーマー向けのブランドも展開しているが、デザインに相当なこだわりを持っているように思われる。事実、どのゲーミングブランドよりも洗練されている。どうしてもゲーマー向けというと、メカメカしいというか、中二的なデザインのものが多いのだが、ZOWIEはシンプルで飽きにくい。その点では価格的に競合となるSennheiser GSX 1000なんかとも戦えるのではないかと思っている。
実写画像
分解して中身を確認
またやってしまった。分解できるとわかれば我慢できないという困った性分である。こんなもん分解してどうすんだと思いつつ、マウスの時のように中の部品が気になって仕方ない。後ろのゴムで張られた部分がちょっと気になって爪ではがしたら、ネジが見えてしまった。つい出来心で、と言い訳しながら撮った写真が以下である。ZOWIEはスペックをあまり公表しない秘密主義メーカーなので、それが逆にそそられるという罠。Googleで調べたが、やはりこんなものを分解した人はいないので、そういう意味では独自コンテンツだ。
基盤は3枚で構成されていて、中身もシンプルで美しい。USBコントローラーチップ(USB-DAC)には台湾のTENOR社製TE7022Lを採用。これは多くの製品に採用される定番サウンドチップだ。オーディオDACコンバーターはTexas Instruments社製のPCM5142だ。サンプルレートコンバーターはTexas Instruments社製のSRC4190となっている。サーフェスマウントリレーはオムロン製のG6K-2F-Yだ。マイクロコントローラーはCYPRESS社製のセミコンダクター(半導体)である「CY8C4124LQI443」がひとつ、「CY8C4014LQ」がふたつだ。オペアンプ(オーディオアンプ)は、新日本無線社製のNJM8801だ。
重量
実際に重量を計測すると、113.1gであった。持ってみるとかなり軽いので、携帯性は抜群だ。
公式画像
総評
総評するとBenQ ZOWIE Vitalはオフライン大会に限らず、家でもメインで使える優秀な外付けサウンドカードと言えるだろう。専用ソフトいらずの設計や直感的な操作ができるタッチパネルなどZOWIEの良さが光る製品だ。ただし、一番の問題は価格の高さで、これをぽんと買えるのは社会人のボーナスくらいなものなので、予算が潤沢な人向けになる。確実にいいものなので、気になるなら試してみては。