BenQ ZOWIE S1 レビュー。新型の左右対称ゲーミングマウス!
今回はBENQ ZOWIEの新しい左右対称ゲーミングマウスである「BenQ ZOWIE S1」のレビューだ。ZOWIEのマウスはこれまで何回も使ってきた過去があるので、僕の中で最初から期待値が高いのだが、実際その実力はどうなのか。今回は企業より日本発売前に製品提供があったので、じっくりとレビューしていきたいと思う。「BenQ ZOWIE S2 レビュー。S1との違いを丁寧に解説!」も合わせて読むといいだろう。
BENQ ZOWIEとは?
ゲーミングマウス分野では昔からZOWIE GEARという会社があったが、2016年にモニター大手のBenQが買収し、現在のBenQ ZOWIEとなった。ZOWIEのゲーミングマウスと言えばこれまではECシリーズが代表的で、カウンターストライクの伝説的プレイヤーであるHeaton氏が監修したモデルだ。本名がEmil Christensenのため、頭文字を取ってECシリーズとしている。プロゲーマーが求める性能だけに特化した製品を作ることが大きな柱となっていて、価格・外観・多機能性などセールスを目的とした部分は考えず、ゲーマーが真に求めるものを追求するという企業理念を持つ。そのことは徹底したドライバレス主義やLEDを排除した光らない外観などに如実に表れている。
長所
〇トップクラスの追従性能を誇る。DPIが高くても低くても安定している。
〇ホイールがほどよく硬いので回しやすい。きっちり回る。誤爆がない。
〇メインボタンがほどよく硬いので連打しやすい。
〇他社製品と比較するとやや小さいので、日本人の手に合いやすい。
〇大きめのサイドボタンが押しやすい。
〇どんな持ち方にも対応。かぶせ持ちもつまみ持ちも快適に操作できる。
〇専用ドライバのインストール不要。どのPCでもすぐプレイできて不具合が少ない。
〇ケーブルが非常に柔らかい。取り回しやすいので使いやすい。
短所
×ソールがハイセンシ用の止まるタイプ。ローセンシにとって滑りが足りない。
×専用ドライバがない分、機能が少ない。直線補正、加速、マクロ、LED設定がない。
実測のスペック
・通信方式:有線
・センサー:光学センサーはPixart製、PMW3360
・形状:右利き専用の左右対称型
・トラッキング速度:250IPS
・解像度:400、800、1600、3200
・大きさ:横126mm、縦66mm、高さ39mm
・重量:公称87g(ケーブルなし)、実測87g。
・メインボタンスイッチ:HUANO製の青色スイッチ、耐久性能2000万回
・サイドボタンスイッチ:HUANO製の赤色スイッチで、耐久性能は不明。
・ホイールボタンスイッチ:HUANO製の赤色スイッチで、耐久性能は不明。
・ホイールエンコーダー:無刻印、16回刻み
・リフトオフディスタンス:布製で1.5mm以下、プラスチックで1.8mm
・リフトオフディスタンス調整機能なし
・マイクロプロセッサ:TXC社製7Cシリーズの「TXC 7C64346 48L」
・ドライバレス機能あり
・マクロ機能なし
・レポートレート:125Hz、500Hz、1000Hz
・LED:非搭載
・ボタン数:5個
・加速:なし
・直線補正:なし
・ケーブルはビニールでやわらかめ
・保証期間:1年間
・センサー位置:中央
・発売日:2019年10月8日
・マウスソール:テフロン(PTFE)
・表面加工:マット加工
使い心地と体感レビュー
率直に言うとZOWIEらしい癖のないシンプルで使いやすいマウスだと思った。僕は昔から左右対称マウスが好きで、SteelSeries Senseiを主に使ってきたのだが、乗り換えもすんなりとできた。飽きの来ないデザインで、センサー性能が高くて安定しているから、普段使いのマウスとして安心して使用できるイメージだ。
クリック感
左右メインボタンの作りは非常に良い。硬くて連打しやすいから、高速連打が有効なFPSに向いている。サイドボタンも大きくて押しやすく、クリック感もいい。ホイールクリックも良好だ。
ホイール
ホイールの評価は分かれるかもしれないが、僕にとっては、これまで使ってきたゲーミングマウスの中でかなり良いと感じる。硬くて回しやすく、誤爆がないきちっとした感触なのだ。音で表すならコリコリといった感じで、硬いから経年劣化にも強そうだ。ZOWIEのホイールは一般的な24回刻みではなく、16回刻みなのでややひとつひとつの間隔が広い。これも好みが分かれる原因となっている。分解してわかったのだが、このホイールは独自の内部機構によってもたらされるZOWIE特有のものだった。
大きさ、持ちやすさ、形状
BenQ ZOWIE S1はS2よりも大きいモデルだが、ゲーミングマウス全体と比較するとやや小さい製品に該当する。ほどよく小さいから、日本人の手に合いやすく、浮かせやすいから操作しやすい。左右対称マウスではあるが、右利き専用となっていて、右側に邪魔なサイドボタンなどもない。手にぴったりとフィットするからぶんぶん振り回せる。かぶせ持ちにはもちろん、つまみ持ちでもきちんと持てる。
表面加工
マウスの上面と左右側面は同じような滑り止めのマット加工が施されている。汗をかいた手で持つとべたつくが、基本的にはサラサラとした肌触りなので、持っていて気持ちいい。
裏面のボタンとソール
裏面にはDPI変更ボタンと、ポーリングレート変更ボタンのふたつがある。これらはAIMに直接作用するため、物理ボタンで制御しているという安心感は持てる。ただ、搭載するとやや重くなってしまうため、軽量化という点ではあまりよくない。ソールは大きめのものがふたつ付いていて、よく止まるハイセンシ向きの仕様だ。振り向き20センチ以上のミドル~ローセンシプレイヤーにとってはあまり滑らないと感じるだろうから、必要に応じて換装しよう。
ケーブルや付属品
ケーブルは超やわらかく、合成ゴムのようなビニールで覆われている。この優秀なケーブルもZOWIE特有のものだ。他社製にも柔らかいものは確かにあるが、どれも布巻きでビニール素材のものはあまりない。布製よりは肌触りがいいから個人的には好き。おまけのソールが付属でついているので、劣化しても1回までなら交換できる。
実写画像
リフトオフディスタンス検証
布製とプラスチック製のマウスパッドを用意して、0.1mmのコピー用紙を重ねていき、リフトオフディスタンスを検証した。結果は以下の通りだが、布製マウスパッドでは1.5mm以下、プラスチックでは1.8mmという結果に。最近は1.0mm以下のリフトオフディスタンスを持つマウスが増えてきているので、かなり優秀というわけではないが、どちらも合格ラインである2mm以下の基準を満たしているので必要十分だろう。1.0mmのマウスから乗り換えてもリフトオフの違和感はあまり感じなかった。
布製マウスパッド
SteelSeries QCK:1.5mm
Artisan Zero:1.4mm
Roccat Dyad:1.5mm
プラスチック製
Logicool G440t:1.8mm
重量と直線補正
実際に計量器にのせると、重量は公称通り87gだった。
直線補正
ペイントでできるだけ丸い字を書いて直線補正を調べた。結果が上図だが、直線補正がかかっているようには感じなかった。きちんと切れている。設定でもオンにすることはできないので、直線補正を望む人でも入れることはできない。
センサー性能のチェック
MouseTester1.2を使ってセンサーの性能をチェックした。400、800、1600、3200 DPIごとにポーリングレート1000Hzで計測。2.5秒の間に高速で5回の円を描いてテストした結果が下図だ。青線が横移動、赤線が縦移動のグラフになる。さすが古参の大手メーカー、折り返しもほとんどブレない、ものすごく綺麗な曲線だ。センサーの性能をほぼ完璧に出し切っていると言えるだろう。あえて最新のセンサーであるPWM3389を採用せず、成熟しきったPMW3360を採用したのは、これが理由かと思わず頷いてしまった。ソフトウェア面かハードウェア面か分からないけれども、開発段階でこちらの方がいいとなったのだろう。最新にこだわらない、真にプロゲーマーが求める性能というわけだ。6400、12000 DPIなどゲーマーに必要ないであろうDPIを排除するのもZOWIEらしい。
分解して中身を確認
センサーはPMW3360DM-T2QU H5263934Cだ。左右メインボタンはHUANO製の青色スイッチで、耐久性能は2000万回。サイドボタンスイッチとホイールボタンスイッチはHUANO製の赤色スイッチで、耐久性能は不明。ホイールエンコーダーの製造元は不明で無刻印。マイクロプロセッサー(制御チップ・MCU)は、TXC社製7Cシリーズの「TXC 7C64346 48L」。ZOWIEは昔からHUANO製のスイッチを採用している。硬いと言われた時期もあったが、最近は定番のオムロン製と遜色ない品質になっていると個人的には思っている。耐久回数が分かりにくいというのが難点だが、メインボタンに使われているものは確かな品質だから必要十分だろう。
大きさ、形状比較
左からLogicool G304、BenQ ZOWIE EC2-A、BenQ ZOWIE S1、SteelSeries Sensei 310だ。比較に使ったのはどれも小型のマウスだが、あまり大きさが変わらないことが分かるだろう。S2はこれよりもっとスリムになる。
総評
総評するとBenQ ZOWIE S1はシンプルで使いやすい左右対称マウスと言える。トップクラスの安定したセンサーや硬くて回しやすいホイール、高速連打しやすいメインボタンなど随所に光る長所を持っている。ローセンシにとって滑りにくいソールなど全体を見渡せば気になる点はあるものの、往年のZOWIEファンにはたまらない製品になったと言えるだろう。